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極東の新しい西側

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 ドイツ紙(ZEIT online)に、気になる記事が掲載されていたので、雑に和訳してみる。

 

 記事のタイトルは、"US-Außenpolitik: Der neue Westen liegt im fernen Osten"(米国の外交政策:新しい西側は極東にある)。マティアス・ナス(Matthias Naß)のコラム。以下、内容である:

 

 アフガニスタンでの大失敗の後、アメリカの外交政策の中心は、さらにインド太平洋に遷移した。国際政治では、ヨーロッパは周辺に移動している。

 

 アメリカだけでなく、NATOとドイツも、アフガニスタンで失敗した。西側は全体として失敗した。テロリストの直接の脅威が他の選択肢を残さない限り、即座の軍事介入はない。しかし、これはアフガニスタンへの介入の始まりでもあった。それから、軍事的介入が継続した理由は他にもあり、最終的に西側は、目的、交戦相手、成功の可能性について正直に説明することなく、二十年もの間、戦争を繰り広げた。

 

 しかし、正確には、アフガニスタンで何が失敗したのであろうか?西側による戦争?西側の政治的結束?自国民とアフガニスタンに対する誠実さ?西側自体の理念でさえ?西側は、なおも存在しているのだろうか?とコメンテーターは尋ねる。

 

 確かなことの一つは、21世紀の西側は、もはや20世紀後半の西側ではない。それは、冷戦の西側、ソビエト連邦ワルシャワ条約国との対立であり、これは北大西洋地域の西側であり、NATOとほぼ同じであった。


 21世紀の西側は、地理的にも地政学的にも異なる。アメリカにとって、中国との競争はかつての東西対立に取って代わった。今日の二つの支配的勢力間の争いは、もはや北大西洋ではなく、インド太平洋に焦点を合わせている。そして、両者は軍事的に互いに競争するだけでなく、少なくとも経済的および技術的にも同程度に競争している。経済的に非常に成功している中国は、官僚主義的に硬直化し、最終的に破綻したソビエト連邦とは異なる課題を提示している。


 米国のジョー・バイデン大統領は、それを明確に述べた:「我々は、はるかに重要な中国との競争に集中したいので、アフガニスタンを去る。」カブール空港で混乱が激化する中、シンガポールベトナムを訪れた彼の副大統領カマラ・ハリスは、彼女の外遊において、彼らの政権の新しい優先事項を再確認した。「21世紀の歴史が書かれるとき、ここインド太平洋で多くのことが起こると私は信じています。」

 

 アメリカとヨーロッパの同盟である旧西側は、これらすべてにおいて小さな役割しか果たしていない。ベルリンで最も優秀な外交政策専門家の一人は、最近、「ドイツは、ヨーロッパ全体と同様に、米国の周辺地域になりつつある」と述べている。 

 

 日本、韓国、オーストラリアなどの他の米国の同盟国は、重要性を増している。そして、インドなどの新しいパートナーが追加された。近年、これら四か国が集まって緩い関係を形成し、やや拘束力のない名称、Quadrilateral Security Dialogue(四カ国戦略対話)が付けられた。「クワッド」は、NATOに匹敵する軍事同盟ではない。しかし、軍事的同盟を含む結束は、ますます近づいている。現在、四か国の軍用艦は、太平洋のグアム島周辺海域で大規模な軍事演習を行っている。

 

 ジョー・バイデンの大統領就任後、ホワイトハウスに日本の首相と韓国大統領を最初に迎え、ヨーロッパに向けてNATOEUを訪問する前に、仮想サミットのために「クワッド」の指導者と会ったのは、偶然ではなかった。アメリカの外交政策の中心は、インド太平洋地域に移った。


 ヨーロッパ人は、それに順応し始めている。かつての植民地勢力がインド・太平洋地域にまだ存在しているイギリスやフランスのような国々は、ますます頻繁にそこに軍旗を掲げている。イギリスは、ちょうど彼らの新しい空母、HMSクイーン・エリザベスを南シナ海に派遣した。そしてフランスは、原子力潜水艦を紛争海域を通過するように航行させた。


 ドイツは取り残されることを望まず、遠路はるばるフリゲートバイエルンを派遣した。 2020年9月に連邦政府が発表した「インド太平洋に関する指針」には、「ドイツはこの地域の(国際)規則や秩序の施行に貢献する準備ができている」と書かれている。これがどのように実施されるかは、当面、この指針のとおりになる。

 

 NATO事務総長のイェンス・ストルテンベルクも、インド太平洋地域のパートナーとの協力を強化したいと考えている。「NATO加盟国と、自由、人権、多国間主義などの共通の価値観を支持する太平洋地域の国々との間に、より緊密なプラットフォームが構築される」と、ストルテンベルク氏はインタビューで述べた。NATOは現在、インド太平洋をテーマにした戦略的概念に取り組んでおり、これは次回のNATOサミットで採択される予定である。

 

 そのため、旧西側諸国は、可能な限り新西側諸国を支援したいと考えている。アメリカは、ヨーロッパがなくても、インド太平洋でかなり上手くやっていくことができることを示唆している。ロイド・オースティン国防長官は、数週間前に英国で、インド太平洋では歓迎されているものの、軍事的資源はどこでも不足しており、ヨーロッパは引き続き必要であることを知らせた。ボリス・ジョンソンの、誇り高きグローバル・ブリテンに対する、若干の恥辱。

 

 新しい西側がどの程度、西側になるかは、まだ分からない。インド太平洋におけるアメリカのパートナーは、大体民主主義国ではあるが、ヨーロッパの価値観では、彼らは旧西側諸国よりも、かなり民族主義的かつ権威主義的である。そしてむしろ多国間主義を嫌悪する。戦略から地理まで、すべてが若干複雑で、混乱を招きかねない。それに加えて、ヨーロッパから見た新しい西側は、はるか東にある。結局のところ、アメリカから見ると、その方角は正しい。 

 

(訳了)

 

 アフガニスタンの失策を無理して繕っているような記事であるが、アメリカにとって、中国の台頭がソ連以上に脅威的であるというのは、そのとおりかもしれない。というより、今のアメリカ(およびヨーロッパ諸国)の凋落と対照的な中国の隆盛を見ていると、中国指導部が言うように、21世紀は中国の時代かもしれないと思えてしまう。

 

 それにしても、アフガニスタンへの軍事介入の理由は他にもある、という冒頭の記述は示唆に富む。表立って公表できない理由があるということなのだろうが、それを前提にしなければ、二十年にも及ぶ軍事介入は、到底説明不可能なのである。