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Das ist ein Tagebuch...

大坂なおみ

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 ドイツ紙(ZEIT online)に、オリンピック関連の記事が掲載されていたので、斜め読み程度に和訳してみる。

 

 記事のタイトルは、"Naomi Ōsaka: Die Frau mit dem Feuer"(大坂なおみ:炎の女)。「聖火ランナー大坂なおみは、今回のオリンピックのスーパースターである。日本は彼女の成功によって飾られる。しかし、人種差別に対する彼女の関与には、日本人の多くは疎遠である。」ヤニク・シュナイダー(Jannik Schneider)による記事。以下、内容である:

 今回のオリンピックは危機に瀕しているかもしれないが、大坂なおみが開会式で聖火を灯したとき、1996年のアトランタでのモハメド・アリや、2000年のシドニーでのキャシー・フリーマンと同様に、再び特別な魔法がかけられた。


 日本のテニス選手、大坂なおみ東京オリンピックのスターである。彼女は世界で最も高給取りの女性アスリートであり、世界ランキング1位であり、Netflixは彼女にドキュメンタリーを捧げた。しかし、彼女は人種差別に反対し、うつ病について率直に話しているため、テニスコートの外でも高い知名度を有している。

 

 彼女と日本との関係は、調和だけが特徴ではない。大坂なおみは、日本人とハイチ人の娘として、同じ姓の街で生まれた。彼女がまだ子供だったとき、父親が日本社会に受け入れられたと感じたことは一度もなかったので、家族はニューヨーク経由でアメリカのカリフォルニアに移住した。アメリカで、大坂は、可能な限り最高の能力を備えたプロ選手に成長した。彼女は四つのグランドスラムタイトルを獲得し、日本のテニス史上、最高のプレーヤーとなった。

 

 しかし、スポーツの枠を超えて、彼女はバックハンドではなく、社会的関与によって知られていた。彼女が優勝した昨年の全米オープンでは、七つの試合の勝利スピーチに際し、アメリカの警察の暴力の犠牲者となった人々の名前が書かれた、七つの異なるマスクを着用した。これが彼女が人種差別に反対するやり方である。

 全仏オープンで記者会見を行う義務に反対した大坂は、最近騒動を引き起こした。彼女はトーナメントからも撤退し、うつ病との戦いでこれを正当化した。これほどの激しさで精神疾患についてコメントしたアスリートは、未だかって存在しなかった。

 

 もちろん、彼女のようなアスリートは、非常に上手く自分を売り込むことができる。ファッションエージェンシーIMGは、彼女をクライアントとして確保した。数日前、エレクトロニクスの巨人(パナソニック)が、大坂を後援する大企業の仲間入りをした。フォーブスによれば、これが大坂が世界で最も高報酬の女性アスリートになった理由である。賞金の約2,000万ドルに加えて、2020年には約3,700万の広告収入があった。これはまた、金額的にセリーナ・ウィリアムズを追い抜いた。大坂は、その現代的な見方によって、全ての世代をリードしていると言われている。

 

 大坂なおみは、小話に自信のある、社交的な人ではない。テニスの場面では、彼女は恥ずかしがり屋で、不安で、控えめだと考えられている。スピーチや記者会見は、たとえそれが非常に重要であったとしても、彼女の本来の仕事ではない。彼女自身だけが、公の場での出演がどれだけ負担であり、彼女が回復するために何が必要かを知っているであろう。

 

 ある種の人々にとっては、大坂がますますブランドになりつつあるのは、いっそう苛立たしいことである。彼女は "Vogue"の表紙を飾り、"Sports Illustrated"の表紙に登場した、最初の浅黒い肌の女性アスリートであった。マルチパートのNetflixドキュメンタリーがリリースされ、彼女は自分のバービー人形を宣伝し、タイム誌にエッセイを寄稿した。

 

 「大丈夫でなくても大丈夫です」と、タイム誌の見出しには書かれていた。「知識ナンバーワン。だけど、みんなを喜ばせることはできない」と、大坂は書いた。彼女は書面でのコミュニケーションが大好きである。

 

 彼女の故郷でも大きな関心が寄せられている。年間を通じて、四つの主要なテニストーナメントでは、数十人の日本人記者が彼女をフォローしている。ZDFのコメンテーターである、ベーラ・レティ(Béla Réthy)が金曜日に発表した、大坂が日本語をほとんど話せないという神話は、真実ではない。彼女は、メルボルン、パリ、ロンドン、ニューヨークではいつも、日本語で自分自身を表現したーしかし、ゆっくりと、そして多大な努力を払いながら。

 

 日本は大坂のスポーツの成功によって飾られている。祖父が住んでいた北海道の根室に、彼女に敬意を表して博物館が建てられた。しかし、多くの日本人は、彼女のスポーツ外活動に疎遠である。「日本では、スポーツ選手は、社会変革を提唱する役割を担っていない」と、神戸大学社会学教授、小笠原宏樹(Hiroki Ogasawara)は、シュピーゲル誌に語った。日本のアスリートは、エンターテイナーとして見なされる可能性が高い。


 いずれにせよ、開会式の後、日本の主要メディアのいずれも、ホームページ上に大阪が聖火台に炎を灯している写真を掲載していないことに、人々は気づいた。「過去にナチス・ドイツと同盟関係にあった、日本のような保守的で国粋主義的な国では、この象徴的で歴史的な任務を、日本人とハイチ人の間に生まれた、アメリカ育ちの女の子に任せるのは、自然なことではない」、ドイツ人ジャーナリスト、イェンス・ヴァインライヒ(Jens Weinreich)は、そう書いた。政治的に活動的な若い女性、「それは日本にとってほとんど革命的である。」

 

 日本では外国パスポートを所持している居住者は、約2.3パーセントに過ぎないことを知っておく必要がある。外国人労働者は、高齢化するこの国をいくつかの分野で支える必要がある。しかし、出自はこの社会において主要な役割を果たしている。これは、最近あった別の事件によって証明されている。日本に20年間住んでいるセネガルのミュージシャン Latyr Sy が、開会式の直前に、主催者によって(彼の演奏が)キャンセルされたと投稿した。彼は人種差別的な主催者を非難した。

 

 金曜日に聖火トーチを持った大坂なおみが東京で炎を灯したとき、彼女は著しく緊張していた。この作業の負担だけで十分だったのだろう。彼女の国の歴史的背景、彼女の出自、そして彼女自身のコンディションを考えると、これらのどれも彼女にとってあまりにも過大でなかったことが望まれる。

 

 以上である。オリンピックにもテニスにも興味がないが、日本人の根深い人種差別意識を扱っている点で、この記事は興味深い。それから、日本に生まれた者がその能力を最大限に発揮できる場所、それは日本ではなく、アメリカやヨーロッパといった海外であるという、よく知られた事実が、彼女の事例でも証明されている気がする。いずれにせよ、勇気と才能、それに純粋な魂を持った彼女のさらなる活躍を、心から期待する。