QVOD TIBI HOC ALTERI

Das ist ein Tagebuch...

ホテルニューグランド

 4連休最後の日曜日は、近場の横浜に行ってきた。シーバスに乗り、山下公園経由でホテルニューグランドで昼食を取り、元町経由で帰宅する。

 

そごう裏、シーバス乗り場前

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氷川丸

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山下公園ホテルニューグランド

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ニューグランド内部

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伝統の「ナポリタン」

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 横浜は、海辺ということであろうか、意外とそれほど暑くなかった。昼食をとった後、元町のウチキパンで朝食用のパンを購入して、帰宅した。

大坂なおみ

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 ドイツ紙(ZEIT online)に、オリンピック関連の記事が掲載されていたので、斜め読み程度に和訳してみる。

 

 記事のタイトルは、"Naomi Ōsaka: Die Frau mit dem Feuer"(大坂なおみ:炎の女)。「聖火ランナー大坂なおみは、今回のオリンピックのスーパースターである。日本は彼女の成功によって飾られる。しかし、人種差別に対する彼女の関与には、日本人の多くは疎遠である。ヤニク・シュナイダー(Jannik Schneider)による記事。以下、内容である:

 今回のオリンピックは危機に瀕しているかもしれないが、大坂なおみが開会式で聖火を灯したとき、1996年のアトランタでのモハメド・アリや、2000年のシドニーでのキャシー・フリーマンと同様に、再び特別な魔法がかけられた。


 日本のテニス選手、大坂なおみ東京オリンピックのスターである。彼女は世界で最も高給取りの女性アスリートであり、世界ランキング1位であり、Netflixは彼女にドキュメンタリーを捧げた。しかし、彼女は人種差別に反対し、うつ病について率直に話しているため、テニスコートの外でも強い知名度を有している。

 

 彼女と日本との関係は、調和だけが特徴ではない。大阪は、日本人とハイチ人の娘として、同じ姓の街で生まれた。彼女がまだ子供だったとき、父親が日本社会に受け入れられたと感じたことは一度もなかったので、家族はニューヨーク経由でアメリカのカリフォルニアに移住した。アメリカで、大阪は可能な限り最高の能力を備えたプロ選手に成長した。彼女は四つのグランドスラムタイトルを獲得し、日本のテニス史上、最高のプレーヤーとなった。

 

 しかし、スポーツの限界を超えて、彼女はバックハンドではなく、社会的関与で知られていた。彼女が優勝した昨年の全米オープンでは、七試合の勝利スピーチで、アメリカの警察の暴力の犠牲者となった人々の名前が書かれた、七つの異なるマスクを着用した。これが彼女が人種差別に反対する方法である。

 全仏オープンで記者会見をする義務に反対した大阪は、最近騒動を引き起こした。彼女はトーナメントからも撤退し、うつ病との戦いでこれを正当化した。これほどの激しさで精神疾患についてコメントしたアスリートは、未だかって存在しなかった。

 

 もちろん、このようなアスリートは、非常に上手く自分を売り込むことができる。ファッションエージェンシーIMGは、彼女をクライアントとして確保した。数日前、エレクトロニクスの巨人(パナソニック)が、大阪を代表する大企業の仲間入りをした。フォーブスによれば、これが大阪が世界で最も高報酬の女性アスリートになった理由である。賞金の約2,000万ドルに加えて、2020年には約3,700万の広告収入があった。これはまた、金額的にセリーナ・ウィリアムズを追い抜いた。大阪は、その現代的な景色によって世代を超えてリードしていると言われている。

 

 大坂なおみは、小話に自信のある、社交的な人ではない。テニスの場面では、彼女は恥ずかしがり屋で、不安で、控えめだと考えられている。スピーチや記者会見は、たとえそれが非常に重要であったとしても、彼女の本来の仕事ではない。彼女自身だけが、公の場での出演がどれだけ負担であり、彼女が回復するために何が必要かを知っているであろう。

 

 ある人々にとっては、大阪がますますブランドになりつつあるのは、いっそう苛立たしいことである。彼女は "Vogue"の表紙を飾り、"Sports Illustrated"の表紙に登場した、最初の浅黒い肌の女性アスリートであった。マルチパートのNetflixドキュメンタリーがリリースされ、彼女は自分のバービー人形を宣伝し、タイムズ誌にエッセイを寄稿した。

 

 「大丈夫でなくても大丈夫です」と、タイムズ誌の見出しには書かれていた。「知識ナンバーワン。みんなを喜ばせることはできない」と、大阪は書いた。彼女は書面でのコミュニケーションが大好きである。

 

 彼女の故郷でも大きな関心が寄せられている。年間を通じて、四つの主要なテニストーナメントでは、数十人の日本人記者が彼女をフォローしている。ZDFのコメンテーターである、ベーラ・レティ(Béla Réthy)が金曜日に発表した、大阪が日本語をほとんど話せないという神話は、真実ではない。彼女は、メルボルン、パリ、ロンドン、ニューヨークではいつも、日本語で自分自身を表現したーしかし、ゆっくりと、そして多大な努力を払いながら。

 

 日本は大坂のスポーツの成功によって飾られている。祖父が住んでいた北海道の根室に、彼女に敬意を表して博物館が建てられた。しかし、多くの日本人は、彼女のスポーツ外活動に疎遠である。「日本では、スポーツ選手は、社会変革を提唱する役割を担っていない」と、神戸大学社会学教授、小笠原宏樹(Hiroki Ogasawara)は、シュピーゲルに語った。日本のアスリートは、エンターテイナーとして見なされる可能性が高い。


 いずれにせよ、開会式の後、日本の主要メディアのいずれも、ホームページ上に大阪が聖火台に炎を灯している写真を掲載していないことに、人々は気づいた。「過去にナチス・ドイツと同盟関係にあった、日本のような保守的で国粋主義的な国では、この象徴的で歴史的な任務を、日本人とハイチ人の間に生まれた、アメリカ育ちの女の子に任せるのは、自然なことではない」、ドイツ人ジャーナリスト、イェンス・ヴァインライヒ(Jens Weinreich)は、そう書いた。政治的に活動的な若い女性、「それは日本にとってほとんど革命的である。」

 

 日本では外国パスポートを所持している居住者は、およそ2.3パーセントに過ぎないことを知っておく必要がある。外国人労働者は、高齢化するこの国をいくつかの分野で支える必要がある。しかし、出自はこの社会において主要な役割を果たしている。これは、最近あった別の事件によって証明されている。日本に20年間住んでいるセネガルのミュージシャン Latyr Sy が、開会式の直前に、主催者によって(彼の演奏が)キャンセルされたと投稿した。彼は人種差別的な主催者を非難した。

 

 金曜日に聖火トーチを持った大坂なおみが東京で炎を灯したとき、彼女は著しく緊張していた。この作業の負担だけで十分だったのだろう。彼女の国の歴史的背景、彼女の出自、そして彼女自身のコンディションを考えると、これらのどれも彼女にとってあまりにも過大でなかったことが望まれる。

 

 以上である。オリンピックにもテニスにも興味がないが、日本人の根深い人種差別を扱っている点で、この記事は興味深い。それから、日本に生まれた者がその能力を最大限に発揮できる場所、それは日本ではなく、アメリカやヨーロッパといった海外であるという、よく知られた事実が、彼女の事例でも証明されている気がする。いずれにせよ、勇気ある彼女の活躍を心から期待する。

秩父神社

 4連休ということで、久しぶりに秩父に行ってきた。目的は、秩父神社参拝と、秩父音霊場先達申請のため。

 

武甲山

 石灰岩採掘により本来の山頂は消失し、山体の崩壊が著しい。

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秩父神社 

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 拝殿、本殿の左側が修復中。

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所十三番 慈眼寺

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札所十四番 今宮坊

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札所十五番 少林寺

 境内前の秩父鉄道をSLが通過中。

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 西武秩父駅から歩いて参拝。今日も暑かった。十三番の慈眼寺で先達申請書をもらう。必要事項を記入して、後日郵送してほしいとのこと。

 

 西武秩父駅仲見世通り)が様変わりして、フードコートや温泉が新設されていた。秩父札所は巡りやすいので、もう一度始めてもいいと思っているが、先達申請料1万円は、いささか高い気がする。

阿伎留神社

 あきる野市鎮座の、阿伎留神社(武蔵国式内社)に参拝に行ってきた。JR武蔵五日市駅から歩いて参拝。近所以外の神社参拝は、約半年ぶりである。

 

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 秋川のほとりに鎮座。非常に暑かった。付近にあるこの神社の境外摂社、琴平神社と(磐座であろう)天狗岩も訪れたかったのだが、山を登るため、家族同伴では無理なので、これで帰宅した。

 

 報道等によれば、ドイツ西部やベルギーでは、洪水でかつてなかったような被害が出ているとのこと。確かに映像を見てみると、従来のような増水による家屋等の浸水被害ではなく、日本で起こるような、土砂や激流による破壊的な被害が起きている模様。多くの人の安否が不明とのことで、心が痛む。

 

 話は変わるが、遂に職場でコロナ発症者が複数出たとのこと。私自身は濃厚接触者ではないと言われたものの、かなり心配である。こんな中で本当にオリンピックを開催するのだろうか?いまだに信じられない。

魂を奪われたオリンピック

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 ドイツ紙(ZEIT online)に、オリンピック関連の記事が掲載されていたので、雑に和訳してみる。

 

 記事のタイトルは、"Olympische Spiele 2021: Olympia ist seiner Seele beraubt"(2021年のオリンピック:オリンピックは魂を奪われる)。「オリンピックは、パンデミックに対する人類の勝利を祝うことを目的としていた。今、オリンピックは人類の敗北の象徴になる。意志、先見性、勇気が足りなかったからである。」トービアス・ラントヴェーア(Tobias Landwehr)による記事。以下、内容である:

 東京での感染者数は再び増加しており、感染の第五波が差し迫っている。人口約1,400万人のこの都市では、毎日約900名の新規感染者がある。ちょうど一ヶ月前に決定された緩和は撤回されており、東京は緊急事態のレベル4に戻っている。


 結局のところ、オリンピックに観客を入れるのは困難である。そのため、世界最大のスポーツイベントは、(福島でのサッカーや札幌でのマラソンなど、東京以外のイベントを除き)無観客で開催されることが決定された。したがって、オリンピックはその本来の目的である魂を奪われた。

 

 オリンピックは国際社会の社会的接合剤である。アスリート(オリンピック選手としてでなく群衆に簡単に溶け込む)、観客、そして市民はお互いに開放的になる。最後に残されていた、国内の観客だけが認められたスリム化された案では、東京は少なくとも、観衆の声援に値する以上のアスリートには、開放されていたであろう。

 

 しかしながら、オリンピック選手は現在、コロナ患者のように東京から隔離されている。そして、この都市の住民である東京都民にとって、世界の国々からの侵入者は、火星探査や原発プラントにおけるのと同じような遠隔操作によって、扱うことができる。…

 

 オリンピックの精神は、単に施設や競技だけでは生まれない。競技は人の集いである。低俗と思われるかもしれないが、オリンピックではクロアチアの漕ぎ手と散歩してお喋りしたり、彼の銀メダルに触れたりすることも、または、アルゼンチンのファンと一晩中ホッケーの金メダルを祝うことも、できる。


 しかし、このような出会いは今回は存在しない。日本にはそれを違ったやり方で行うのに十分な時間があった。1月にダボスで開催された経済サミットで、菅義偉は「今回の競技は、コロナに対する人類の勝利の証であり、世界的な統一の象徴となるだろう」と発表した。その勝利は、日本のものになるはずだった。日本の政治家は人間の競技を望んでいた。しかし、この時点でさえ、彼らはそれに基づいて行動しなかった。


 大規模イベントに観客を呼び戻す唯一の方法は、社会全体で免疫反応を高めることである:主にワクチン接種によって。その結果、Covid-19はその致死性を失い、ひいては恐怖を失う。イギリスのボリス・ジョンソン首相は、このルールに従って行動した。ウィンブルドンとウェンブリーには、たとえそれが批判される可能性があるとしても、観客がいるのはそのためである。しかし、少なくともイギリスは、高価なワクチンを惜しみなく購入し、プロセスを短縮し、研究を委託した。これらは日本では、なされなかった。

 

 11月に世界的に認められたファイザーによる国際研究(被験者数44,000名、うちアジアから2,000名)に加えて、日本は別の国内研究を予定している。規模:日本人160名。医学的および統計的に全く関連性がないため、この治験の承認は5月まで延期された。そしてそれ以降、日本では実際にワクチン接種が始まった。しかし、大規模イベントであるオリンピックの観客にとって遅すぎた。

 

 しかし、子宮頸がんの予防接種に関するフェイクニュースの波と1990年代からの裁判所判決を受けて、日本でも予防接種に対する懐疑論が存在する。予防接種の代わりに、国は国民の自己規律(自粛)に依存している。しかし、それは起こらなかった。1年以上のパンデミックの結果、日本人は孤立にうんざりしている。特にオリンピックに関しては、観戦することがほとんどできない。新規感染者の大部分は、最終的に再び楽しみたいと思っている20〜30歳の若者である。

 

 日本政府はオリンピックを主催したかったが、何も排除したくなかった。結局のところ、10月には選挙がある。しかし、どちらも不可能である。オリンピックを中止し、国民にとって快適な方法でパンデミックに対応すること、あるいは、オリンピックを完全に主催するために、日本と東京の市民に何かを要求すること、これらは一貫性があったであろう。

 

 したがって、一貫性がなく、両方を失った。すなわち、民意(目下菅は史上最低の支持率)とオリンピックの魂とを。

 

 残されているのはテレビ放送である。しかし、これは何よりもスポンサーである、トーマス・バッハIOCにとって幸運である。なぜなら、それは彼らの収入の大部分を生み出すからである。一方で、東京と日本の納税者は、目下払い戻しが必要な最大7億ユーロのチケット代金を失った。IOCは、契約上、損失を補償する義務を負わない。

 

 今回のオリンピックは、パンデミックに対する人類の勝利を祝うことを目的としていた。しかし今、オリンピックは人類の敗北の象徴になっている。彼らは、オリンピックとは何か、そしてパンデミックが実際に脅かしているもの、つまり人間関係を維持する意志、先見性、勇気が不足していたことを示している。

 

 以上である。あまり質の良い記事ではないが、それでも、今回のオリンピックを巡る一連の出来事で、どんなに鈍感な者でも、良くも悪くも、この国(および日本人)の実態を、少しは瞥見することができたことを示唆する記事であると思う。

箱根(強羅)

  職域接種とやらでやっと一回目のワクチン接種を受けられたので、少し遠出をする気になった。それで、早めの夏休みということにして、箱根(強羅)に行ってきた。

 

 前日の熱海の土石流で鉄道が動くかどうか分からなかったが、小田原までは動いているということで、行くことができた。本日の宿泊先。

 

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 宿泊施設の前を流れる早川。何時にないほど激しい濁流であった。

 

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 当初は早川側の部屋を指定されたが、あまりの轟音に驚いて反対側の山側の部屋に変えてもらった。雨だったので、外出はせず、夕食はルームサービスで済ませた。夕食のポークリブとハンバーグ。外人サイズ。

 

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 小雨模様の翌日も、外出はせず、部屋でお風呂に浸かったり、何もしないで過ごした。昼食のハンバーガーとデザートのメロンパフェ。不味くはなかった。

 

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 宿を選んだ本人によれば、最近できた外国人(西洋人)向けのホテルだそうで、確かに、露天風呂もなく、大浴場は水着着用必須、レストランの料理も刺し身や寿司といった和食はなく、今回いただいたハンバーガーや肉料理ばかりであった。アメリカ人には問題ないだろうが、日本人や中国人にはあまり受けそうもない宿泊施設であった。

 

 恐らくオリンピックを見越しての開業なのだろうが、館内は宿泊客も少なく、外資系のホテルチェーンということで、資金力はあるのだろうが、この先どうなるのかといった様子であった。

中国共産党創設百周年(2)

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 洞窟の部屋はわずか数平方メートルの大きさで、アーチ型の天井があり、比較的暗く、いくつかのシンプルな家具がある。椅子と木製のテーブルの端には、衣服やその他の所持品の棚として機能する陶土製の大きな瓶がある。

 

 同志習は、田舎に送られた他の五人の若者と一緒にここに住んでいたと、ガイドは説明する。彼女は、シンプルな石の台座であるベッドに6つの枕と毛布を指差している。

 

「ここのベッドには小さなテーブルがあります。当時、若い男性はそれを食事や勉強に使っていました。小さなテーブルの上に灯油ランプがあります。国家元首はここでこのランプを使って読書に多くの時間を費やしました。そして彼の顔は、煤によってしばしば真っ黒になりました。」

 

 狭い洞窟住居を訪れる人の中には、ガイドに熱心に耳を傾ける人もいれば、少なくとも部分的に再現されている風景を揶揄する人もいる。当時、習はどこで用を足したのか?彼は本当に小さかったので、他の五人の男性と一緒にその小さなベッドに収まることができたのか?そして、その毛沢東のポスターが実際に壁に掛かっていたのか?

 

 習近平周辺の個人崇拝は、近年、全国的に大幅に増加している。それは国家メディアに遍在している。ニュースのウェブサイトやテレビ局は、国家元首が「巡幸」で視察した企業、軍基地、計画委員会を毎日詳細に報告している。俗悪な音楽をともない、熱狂的に拍手する地元住民の映像を、何度も何度も見ることができる。

 

 彼が中国の人民に実際に近いという痕跡は、全くない。現在68歳の習は何年もインタビューを受けていない。習近平は、昨今の政治についてほとんど発言していない。代わりに、中国全土にかけられている、穏やかに微笑んでいる国家元首を示す大きな肖像画がある。


 大学や国のシンクタンクは、習近平の思想のみを扱う独自の研究所を設立した。フライブルク大学の歴史学者ダニエル・レーゼは、彼が今から約9年前に就任したとき、このような大掛かりな個人崇拝は予見できなかったと言う。

 

 「それは必ずしも予測できなかったことである。結局のところ、毛沢東の死後、個人が党の上に立つことは二度とあってはならないということは、実際には党の自己理解の基礎であった。しかし、明らかに党内遠心力が非常に強かったので、彼はこのように党をまとめる以外の方法を見いださなかった。」


 すべての激動、危機、権力闘争にもかかわらず、習の指導の下で、共産党は、これまで以上にしっかりと権力を保持している。経済面では、中​​国は過去40年間で急上昇した。つまり、貧しい農業国家から世界第二位の経済大国へと成長した。一見、中国は模範的な資本主義国のように見える。しかし、党と国家は(政治経済統制から)実際に撤退したことはない。今日、中国の国営企業はかつてないほど強力であり、数十億ドル規模の民間ハイテク企業はすべて、抑圧、暴力、検閲を絶えず利用しており、その力を行使している。軍隊は依然として共産党党首に従属しており、国家には従属していない。司法は独立しておらず、裁判所と裁判官は党の指示に拘束されている。世界で中国ほど国内治安に多額の予算を費やしている国はない。

 

 しかし、旧東側諸国の共産党とは異なり、中国共産党は21世紀に飛躍した。Süddeutsche Zeitung の長年の中国特派員である、カイ・シュトリットマッター(Kai Strittmatter)は、彼の著書 "Die Neuerfindung der Diktatur"(独裁の新発明)で、このことを印象的に説明している。

 

 「中国共産党は、世界の他の政府とは異なり、人工知能ビッグデータなど、権力と情熱を持ってデジタル化に突入しており、そのシステムにデジタルアップデートを提供している。一方で、経済を将来に向けて射出したいと考えているが、同時に、政治システムを危機から保護したいと考えている。この古い抑圧的なレーニン主義を、将来と危機に耐えられるものにするために。」

 

 体制批判は、公の場では完全に沈黙した。共産党に対する批判は海外からのみ発せられており、中国国内にはほとんど波及しない。TwitterFacebook、Whatsapp、InstagramYoutubeーこれらはすべて中国でブロックされており、多くのWebサイトや国際的なニュースポータルも同様である。

 

 同時に、完全な管理の背後には深刻な不確実性がある。歴史家のダニエル・レーゼは、恐怖の言説について語っている。共産党が実際に一枚岩的に、外の世界に提示されているように確立されているかどうかは不明である。これは、習近平の後継者が予定されている数年後にのみ、明らかになるはずである。しかし、今のところ、彼がいつまで権力を握るのか、誰も知らない。


 しかし、そのような質問は、少なくとも公には、中国では議論されていない。特に延安ではそうではない。そこは中国中部の都市であり、国家的に意匠された共産党の創設神話に関心のある、すべての人々の巡礼地である。

 

 そのうちの一人は、大都市西安に住む29歳のGao Congである。延安の共産党記念碑を訪れたことで、彼は自身の大きな目標である共産党党員になることを目指している。しかし、それはそれほど簡単ではない。

 

 「私が働いている近所のセンターでは、私たち若者の多くが党員になりたいと思っている。だから私は他の人よりももっと良くなるように努めている。志願書に本心を書き込んでいる。党幹部は、私たちについてどう思っているかについて何も示さない。しかしもちろん、彼らは私たちの態度に気づく。だから私は本当の党愛好者になろうとしている。そして私は党の指導者から特別に良い成績と認識を得ようとしている。」


 中国共産党は9100万人の党員を擁していると主張している。党員であることは、国営企業だけでなく、民間企業でもキャリアを積むのに役立つ。しかし、複雑な入党手続きを経て晴れて党員になれるのは、最高の、最も信頼できる、最も野心的な人だけである。正式な党員になるには数年かかる場合がある。29歳のGao Congは、そんなことを気にしない。

 

「党員になることーそれは私にとって大きな名誉である。あきらめることーそれは決して選択肢ではない。」

 

 もちろん、中国のすべての人民が党をそのように見ているわけではなく、共産党内でも同様である。約14億の中国人の中には、共産党を僥倖としてではなく、大きな禍と見なしている人も多い。共産党のおかげで中国がこれほどまでに豊かで強力になったわけではないが、それにもかかわらず、党は定期的に批判的な人々に耳を傾けている。中国という国は、共産党と同じではない、人はこの議論を何度も聞く。延安の共産党大学のFeng Jianmei 教授は、これに憤慨している。

 

 「人民と歴史は決定しました。すなわち、共産党と中国人民は不可分の関係にあります。中国人民と党を別々に見ることができると信じているなら、それはあなたが中国について全く何も理解していないことを意味します。」

 

 フライブルク大学の歴史学者ダニエル・レーゼは、この主張は誤っていると考えている。彼にとって、国家、国民、共産党が不可分であるという主張は、政治戦略に過ぎない。

 

 「これは習近平の下で非常に強く見られる戦略である。つまり、国家と党の境界だけでなく、党と人民の境界も無視される。そして、それは中国や何かを理解していないこととは何の関係もない。むしろ、この議論によって、党に対する批判は、中国、国家、そして国民に対する直接的な批判にもなるという事実と関係がある。代替案について考える理由は、これ以上できなくなる。理由は次のとおりである:歴史はその本望を見出した。」


 これまでのところ、中国共産党はこの理屈でやり過ごしてきた。経済、政治、メディア、そして市民社会と文化的生活の大部分は、完全に党寄りである。それがそのようにあり続けることを確実にするために、共産党は、その創設から100年後、そしてすべての近代化にもかかわらず、依然として古典的な独裁政権の手段に依存している。

 

 以上である。共産党を自○党に入れ替えれば、現政権批判=反日と決めつけられる、この国もそう大して変わらないと思うが、それにしても、カルト宗教と何ら変わらない党組織、最先端技術を駆使しての人民支配、厳格な思想・言論統制、それに極端な貧富の差…。これはもう、ユートピアどころかディストピアではなかろうか。人類は遂に史上最悪の政治経済体制を生み出したということであろうか。

中国共産党創設百周年(1)

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 たまに見ているドイツのラジオ局(Deutschlandfunk)のサイトで面白そうな記事を見つけたので、雑に訳してみる。タイトルは、"100 Jahre Kommunistische Partei Chinas: Eine Staatspartei feiert sich selbst"(中国共産党の100年:国家政党は自らを祝賀する)。

 

 「中国共産党は9千万人以上の党員を擁する。党の唯一の支配権は憲法に規定されている。しかし、その権力を維持するために、共産党は抑圧と検閲の巨大な装置を操作するーそしてプロパガンダ装置は、党創設記念日のために熱くなっている。」シュテフェン・ヴァーツェル(Steffen Wurzel)とルート・キルヒナー(Ruth Kirchner)による記事。以下、内容である:

 
 中国中部の延安市にある楊家嶺野外博物館。外からは目立たないレンガ造りのホールには、特に高齢者、学校の授業、会社の遠足など、訪問者の集団が集まっている。気分は幸せで寛いでいる。彼らのほとんどはスマートフォンを手に持っており、壁に掛かっている赤旗や横断幕、そしてもちろん自撮りなど、興奮して写真を撮っている。

 

 多くの訪問者が遠方からやって来ている。500キロ離れた常徳にある国営企業で働くこの女性のように。彼女は20人以上の同僚と延安にやって来た。

 

「私たちは勉強のためにここに来ました。共産党の創設百周年についてもっと知りたいのです。」

 

「私たちが今この国で経験している幸せな生活はここから始まりました!」


 中国共産党は延安を「革命の都市」として演じている。中国のいわゆる赤い歴史の中心地の一つと見なされている。共産主義者たちはいわゆる長征によって、1935年に瑞金から延安に撤退した。1940年代の終わりまで、この地は共産党の政治的および軍事的本部であった。

 

 外国人向けガイドLiu Tingは、延安の楊家嶺ホールの端に架かっている四つの肖像画を指差している。

 

「この肖像画は、マルクスエンゲルスレーニンスターリンです。彼らの業績、特にマルクスレーニンの業績は、当時の私たちの基礎を形成しました。」

 

 延安は観光客だけでなく、党幹部も魅了している。中国で最も重要な党大学は、陝西省の人口200万の都市にある。Feng Jianmeiは、共産党幹部教育のトップ教授の1人である。彼女は当時と現在の間のギャップを埋める。

 

 「延安時代は我々の党に多くの重要な経験を残した。その一つは、我々の党が強力で団結した指導力を必要としているということである。この経験に基づいて、今日の党は、中央の指導力の中核を持つことがいかに重要であるかを認識した。」

 

 強力な指導力の中核ーそれは国家および党の指導者、習近平への言及である。この68歳の男性は、2012年末から共産党と中国軍、人民解放軍を率いてきた。習は、2013年から国家元首にも就任している。彼は10年間の任期を廃止した。習は現在、彼が望む限り、または党が彼を許可している限り、国家元首および党首である。彼は共産党の専門用語で呼ばれるように「中核」であり、毛沢東以来、共産党と中国の最も強力な指導者である。

 

 習は定期的に、共産党だけが、14億の人口を有する中国を統治するために、歴史によって選ばれたことを言及している。

 

 「歴史は、中国共産党に中国国家の大再生を主導させるという国民の決定が、完全に正しかったことを示している。それから逸脱してはいけない。」

 

 今から100年前に、その四年前のロシアでのボルシェビキ革命に熱心で、この革命をヨーロッパから中国に持ち込もうとした、少数のマルクス主義者のグループとして、中国共産党は始まった。ソビエト連邦コミンテルン、つまりモスクワに本拠を置くコミンテルンの助けを借りて、最初の組織を設置することができたー当時はまだ非合法であった、とフライブルク大学の歴史学者、ダニエル・レーゼ(Daniel Leese)は言う。

 

 「党は長い間、比較的限界状況にとどまり、比較的大きなブームを得るさまざまな段階があり、最大のブームは確かに抗日抵抗戦争、すなわち、1930年代後半から40年代前半の段階にある。第二次世界大戦の中国での戦線が迫っており、共産党愛国心ナショナリズムに大きく依存していた。その後、党員数は数万から激増し、百万を超える。その後、建国の前後に同様の進展があった。」

 

 毛沢東と彼の支持者たちの勝利は、1949年10月1日であった。すなわち、北京の天安門広場での中華人民共和国の建国宣言である。


 今日まで、中国共産党は、ほとんど中断や矛盾のない英雄的叙事詩としての権力掌握の歴史を語っている。事実を正確に分析しようとする歴史学は、独裁政権とは相容れなかった。したがって、歴史学の管理も中国の権力政治の一部であると、中国の過去への取り組みを研究している歴史家のダニエル・レーゼは言う。共産党の歴史記述はほとんど科学的ではなく、聖書釈義、つまり解釈と判断に過ぎないが、中国では共産党は常に絶対的な真実に対する権利を有している。

 

 「それで、最初に歴史の権威ある評価を与えることは、しばしば党の専決事項である。それで通常重要なのは、枠組みを設定することであり、そして歴史家はその枠組みに当該事実をどのように適合するのかを考えなければならない。」

 

 この枠組みにおいて党指導部の壊滅的な過ちに対応するには、依然として知的歪曲が必要である。つまり、党は絶対的な権力への主張を危険に晒さないために、多くの事実を隠蔽したり、再解釈したり、軽視したりしなければならない。すなわち、農地改革の残虐行為と1950年代の「大躍進」の3000万人以上の死ー最大の人為的飢饉につながった誤った工業化キャンペーン。そして最後に、1966年からの文化大革命の10年間。この期間の暴力と混乱は、何百万もの中国人民を殺し、今日でも無数の家族を傷つけている。

 

 党の歴史の深淵に取り組む試みは、常に短命であった。1976年の毛沢東の死後、窓が開いた。中国の経済開放を開始した鄧小平は、1978年に思想の自由を求めた。

 

「多くの重要な問題は1人か2人によってのみ決定され、他の人は従うことができるだけで、自分で考える必要さえない」と、鄧は演説で権力の中央集権化を批判した。

 

 長期独裁者の毛沢東の死後、政治的に党の方向性を変える試みがなされたが、党の権力独占は決して揺るがなかった。それにもかかわらず、中国ではより多くの民主主義への要求が生じ、1989年春に全国的な学生抗議で最高潮に達した。彼らは1989年6月初旬に天安門広場周辺で流血をともない抑圧され、反革命と名付けられた。ヨーロッパでの鉄のカーテンの崩壊後のソビエト連邦の崩壊は、中国でも大きな反響を呼んだ。ソ連の運命は、依然として中国共産党によって権力の手綱を緩めないように明確な警告として見られている。習近平国家主席はこの伝統に従う。

 

共産党によって始められた中国的特徴を伴う社会主義の道は正しい。これを続けなければならない。我々はそれから決して逸脱してはならない。」

 

 習は、歴史的な使命を担っている。毛沢東指導下の共産党が新しい中国を建設した。習の指導の下で、共産党は中国を新しい段階に導く。

 

 彼は再び権力を中央集権化し、毛沢東死後に党が使用を中止した支配装置を利用している。そしてこれには、今日の中国で再び広まっている個人崇拝が含まれる。 


 この個人崇拝は、中国中部の革命都市延安から東へ車で1時間半ほど離れた場所で、特にはっきりと体験できる。梁家河村は狭い谷間にある。近年、中国中部で最も有名な観光地の一つに発展した。その理由は、梁家河周辺ののどかな緑豊かな山々によるものではなく、1960年代後半から1970年代半ばまでの、この村の最も有名な居住者である習近平国家・党主席によるものである。

 

 現在の国家元首は、文化大革命の結果として1969年に梁家河にやって来た。「山を登り、村に下る」をモットーに、1000万人以上の若い都市住民が農村部と未開発地域に送られ、称されているように、労働者・農民階級から実際の生活を学んだ。全国の学校や大学は、当時は共産主義イデオロギー的熱意から閉鎖されていた。習近平は当時、梁家河村の地元の泥だらけの山に掘られた洞窟住居に住んでいた。

 

(続く)

憲法擁護報告とAfD

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 見ているドイツ紙(ZEIT online)に、気になる記事が掲載されていたので、雑に和訳してみる。

 

 記事のタイトルは、"Verfassungsschutzbericht: "Extremisten und Terroristen gehen nicht in den Lockdown""(憲法擁護報告:「過激派とテロリストはロックダウンされていない」)。「過激派は、パンデミックの抗議によっても、この1年で勢力を拡大させている。このようにして、右翼は中産階級の領域に浸透したと、ホルスト・ゼーホーファーは言う。」(ZEIT ONLINE 15. Juni 2021)内容は以下の通り:


 

 昨年、ドイツでは、右翼過激派の政治的態度を持つ人々の数が再び増加した。これは、連邦内務大臣ホルスト・ゼーホーファー(CSU)が連邦憲法擁護庁のトーマス・ハルデンヴァンク長官と一緒に提出した、2020年の憲法擁護に関する報告書から浮かび上がってきた。「右翼過激主義と反ユダヤ主義は、依然としてドイツの自由に対する最大の脅威である」と、ゼーホーファーは述べた。

 

 過激派がコロナ保護措置に対する抗議の際に、中産階級の領域に浸入しようとし、「残念ながらあまりにも頻繁に抗議を印象づけた」ことにより、コロナパンデミックは、政治的過激化に貢献した。ハルデンヴァンク長官は、「過激派とテロリストはロックダウンされていない」と述べた。

 

 報告書によると、右翼過激派傾向の人々の数は、3.8パーセント増加して33,300人になった。憲法擁護庁は、それらのほぼ40%を「暴力的、暴力を使用する意思がある、暴力を支持する、または暴力を肯定する」と評価している。


 憲法擁護報告はまた、右翼過激派の中に約1,000人のいわゆる"Reichsbürger und Selbstverwalter"(帝国市民と自己管理者)を数える。彼らは、連邦共和国とその民主的構造を認識していないため、当局と対立することがグループである。このグループはまた、「彼らの陰謀論を広めるために非常に積極的に」パンデミックを利用した、とゼーホーファーは言った。彼らの5%の増加は、明らかにパンデミックを取り巻く抗議によるものであり、グループは水平思考シーンを通じて自らの舞台を作り上げた。これらのグループは、一般的にインターネット上で彼らの見解を流布することができる。「それは憎悪と社会的動揺のための反響室として機能する。」

 

 ハルデンヴァンクはまた、彼の発言の中で特にAfDに言及した。現在解散しているその右派グループは、実際には現在も活動を続けており、目下新しい構造を形成している。AfDの青年組織である Junge Alternative(JA)も、基本法に矛盾し、反外国人の態度を広める見解を表している。

 

 AfD右派や他の右翼過激派とのつながりがあるため、連邦憲法擁護庁は、ザクセン・アンハルト州の出版社 Antaios も監視下に置いている。2000年以来、Antaiosは盛んに右翼著作家による書籍を出版してきた。

 

 ゼーホーファーはまた、左翼過激主義の展開も憂慮していると述べた。この分野での暴力行為は、34パーセント増加した。この分野はますます暴力的で抑制されなくなっている。彼はそれら暴力行為を秘密裏にそして体系的に行った「小グループ」に言及した。ここでは9,600人が暴力志向であると考えられている。しかし、右翼過激派や帝国市民とは対照的に、左翼過激派傾向は、パンデミックの恩恵をほとんど受けられなかった。

 

 イスラムテロリズムもまた、「我々の開かれた民主主義社会に対する最大の脅威の一つ」であると、大臣は述べた。完全に明確なことに疑問の余地はない。彼らの数が停滞しているとしても、最も危険なイスラム主義運動であるサラフィー主義の支持者は、なお約2,150人存在する。ゼーホーファーは、政治的イスラム主義に関する専門家グループを設立すると発表した。

 

 憲法保護報告書に、初めていわゆる新右翼に関する副章が設けられた。これは、「彼らは右翼過激派の見解を疑似知的コーティングで継続的に取り入れようとした」とゼーホーファーは述べた。それはまた、公に言えることの限界を押し上げることでもある。

 

 以上である。この記事だけではつまらないので、以下、2020年度版憲法擁護報告のAfDの関する記述も抄訳してみる:

 

4.ドイツのための選択肢(AfD)党内派閥「Der Flügel」

 

 2019年1月から疑わしい事例(Verdachtsfall)であるAfD内の派閥「Der Flügel」(翼・派閥)は、2020年3月12日にBfVによって証明された右翼過激派傾向として分類された。この評価は、特に民族的および反外国人の立場の継続的な広がりに基づいていた。2015年3月の「Erfurt Resolution」によって設立されて以来、「Der Flügel」はAfD内での緩い派閥的運動と見なされてきた。「翼」の正式な構成員が存在しなかったとしても、自身の声明によると、支持者数は2019年以降、AfD党員の少なくとも20〜30%であると推測できる。さらに、2019年に開始されたいわゆる"Obleuten"(会長)の任命により、幹部構造が確立された可能性がある。

 

 2020年3月に「翼」が証明された右翼過激派の取り組みとして分類された後、AfD連邦執行委員会は、「翼」の自己解散を求める決議を可決した。これは2020年4月30日に行われた。実行に関しては、解散は、とりわけ、「翼」ロゴの使用の中止、「翼」の公式インターネットプレゼンスの停止、および公式「翼」イベントの中止を意味した。


 この正式な自己解散にかかわらず、2020年の報告年にはメンバーによる集会の継続的な活動が観察された。まず第一に、解散した「翼」の支持者による党全体への継続的な影響を確認することができる。Höcke(ビョルン・ヘッケ)自身、二つのインタビューで、「翼」の主要幹部として、「翼」のFacebookページなどの公の場での出演を終わらせることしかできず、党全体に対する実質的かつイデオロギー的な影響を終わらせることはできなかったと述べた。ヘッケによれば、「翼」周辺の分野の人々は、解散後も党内で活発に活動している。ザクセン州の「翼」の前会長も同様の発言をした。「翼」の基本的な政治的傾向は、正式な解散の前にすでに党全体に「浸透」していた。


 前回の公式会合は、2020年3月6日にシュネルローダ(ザクセン・アンハルト州)で「1.翼ミーティング:ザクセン・アンハルト2020」が開催され、その文脈で地元の「国家政策研究所」(IfS)(第IV章第4章を参照)とのネットワークが一般に示された。「翼」の公式集会が正式な自己解散によって中止された後でも、ドイツ全土から、この運動の支持者や元幹部が集会に参集した。「翼」は演説者として登場したため、明らかに「翼」のイベントの性格を有していた。2020年7月16日、AfDのデモ「団結は強さ!」(Einigkeit macht stark!)がアルテンブルク(テューリンゲン州)で開催された。演説者は、正式に解散した「翼」の支持者と幹部だけであった。さらに、さまざまな「翼」支持者や関係者がゲストとして集会に参加した。


 2020年春以降の政治的議論の主なトピックは、コロナパンデミックとそれに関連する連邦議会、州議会、および連邦政府と州政府によるそれを封じ込めるための措置であった。今年の後半には、このトピックは「翼」の支持者とその演説によって開始された集会も支配した。ここでは、現在のすべての政府の行動は違法かつ違憲であり、独裁政権(「コロナ独裁政権」、「全権委任法」)の行動と同等であると提示された。

 

 さらに、正式に解散した「翼」の幹部は、2020年秋にフランスで行われたイスラム教徒の攻撃に、場合によっては劇的に反応した。その際、彼らは一般的な方法でイスラム教徒に対して扇動しただけでなく、民族、宗教、文化のみに基づいて暴力やテロリズムに対してより高い親和性を有すると仮定した。そして、イスラム教徒は他の宗教的共同体との共存には完全に相容れないものとして蔑視された。ヨーロッパからのイスラム教徒の段階的な追放の計画も概説された。これにより、ドイツにおけるイスラム信仰の実践は、基本法第4条に基づく宗教の自由の原則と相容れない方法で根本的に拒否される。ヘッケは2020年10月30日にコットブスブランデンブルク州)で演説した際に、次のように述べている。


 「我々は『イエス!』と言う。ヨーロッパの平和的な非イスラム化に。私は宗教的に非常に寛容な人間であり、イスラム教の信仰に従って幸福になりたい人は誰でもそうすべきである。しかし、イスラム教には祖国があり、その祖国はフランスではない。ドイツとは呼ばれていない。イスラム教とヨーロッパは共存できない。彼らは別の道を行かなければならないし、そしてそうするであろう。」

 

 緊急手続きにおける決定により、ベルリン行政裁判所(VG)とベルリン-ブランデンブルク高等行政裁判所(OVG)の両裁判所は、2019年度版憲法保護報告書(VSB)の「翼」に関する報告ー疑わしい事例(Verdachtsfall)に、異議がないことを確認した。裁判所は、「翼」の中心的な政治的思想は、ドイツ民族グループを擁護することであり、「外国人」の民族は可能な限り排除されるべきであるという、十分な事実証拠を認めた。民族性(völkisch)に基づくこのような民族概念は、人間の尊厳を侵害する。裁判所はまた、「翼」の代表者が外国人、主にイスラム教信仰に対して絶えず扇動・攻撃し、イスラム教徒を全面的に名誉毀損し蔑視した、十分な事実証拠を認めた。

 

  以上である。昔、研究していたこともあるのだが、ドイツやヨーロッパの極右勢力のシーンー彼らの思想や行動様式ーには、非常に興味深いものがある。もちろん、私自身は、そうした偏狭な排外思想や暴力肯定の行動様式には、理解も共感もできないのだが。

 

 しかし、近年の世界レベルでの右翼・ポピュリスト勢力の現実政治への浸透や、中国のような非民主的体制の西側的価値観へのあからさまな挑戦を見ていると、いわゆる民主主義という価値観も、盤石ではないなと思えてしまう。

バイデンとNATO

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 見ているドイツ紙(ZEIT online)に、国際政治関連の記事が掲載されていたので、雑に和訳してみる。記事のタイトルは、"Nato-Gipfel: Bündnisfall Fernost"(NATOサミット:極東に対する同盟の事例) 。「ポスト・トランプの最初の NATO サミットからの最も重要なシグナルは、今、再び団結しているということである。しかし、それは完全には真実ではない。ジョー・バイデンは中国との対立に焦点を当てている。」マティアス・ナースによる分析。以下、内容である:

 


 それは調和のサミットであった。米国大統領のジョー・バイデンは、29カ国のNATO加盟国の国家元首と政府首脳によって、大きな安堵を伴って彼らの中心に迎えられた。ついに、確固とした多国間主義・大西洋横断主義者が再びワシントンを支配した。そして、調和のとれた新たな始まりのメッセージとともに、トランプ後の最初の会談の主な目的は、実際にすでに達成されていた。

 

 新大統領は以前、アメリカがNATO条約第5条に基づく支援を提供するという「聖なる」義務に完全にコミットしており、同盟は米国の安全にとって「重要」であると断言していた。もちろん、バイデンはまた、加盟国がGNPの2パーセントを防衛費に支出するという約束を履行するように求めている。これはトランプの考えではなく、2014年からのNATOの決定であった。当時の米国大統領はバラク・オバマであり、バイデンは彼の副大統領であった。

 

 NATO事務総長のイェンス・ストルテンベルクは、それ以来、あらゆる機会に、ヨーロッパが軍事費を著しく増加させていると指摘した。ドイツもまた、2014年以降、国防予算を当時の350億ユーロから、現在は530億ユーロに大幅に増大させている。しかし、パーセンテージで見ると、それでも2パーセントには達してはいないが、1.53パーセントは、30の加盟国すべての下位中央域(19位)にある。そして、ベルリンの財政計画を見ると、ドイツはさらに遅れをとっている。

 

 しかし、今回は数字が前面に出て来なかった。アフガニスタンも中心的な問題ではなかったが、NATO加盟国は今後数週間で軍隊を完全に撤退させる予定である。ヒンドゥークシュ山脈に20年近く駐留した後、この撤退は急いでいるようである。タリバンがすぐにカブールで政権に復帰する可能性があるという大きな懸念がある。アフガニスタンの任務が大失敗に終わらないことを確実にするために、NATOは将来、国外ではあるがアフガニスタン軍の訓練を継続したいと思っている。しかし、タリバンが再び権力を握るのを防ぐには、それで十分であろうか?


 しかし、ブリュッセルの議論も、それについてではなかった。むしろ、彼らは同盟の戦略的再編に集中した。ジョー・バイデンは就任の当初から、西側が立っている歴史的な「転換点」について語ってきた。彼は、米国とその同盟国が権威主義国家との対決、とりわけ中国との組織的な対抗に集中することを望んでいる。

 

 イェンス・ストルテンベルクは、この問題に関してアメリカと非常に一致している。彼はサミットの前に「中国の台頭は、我々の時代の最大の安全保障上の課題である」と、Der Spiegel とのインタビューで語った。「中国は我々の価値観を共有していない。その政府は、世界がこれまでに見たことのない方法で自国民を管理している。(...)同時に、中国は我々に接近しており、ヨーロッパの港湾、空港、電力網のような、重要なインフラストラクチャを管理しようとしている。」

 

 サミット後のストルテンベルクの報道機関向け声明では、中国に関する言及が多くを占めた。NATO中華人民共和国に対処しなければならず、それはその武力と偽情報によって同盟の利益を脅かしている。最終宣言は、「ルールに基づく国際秩序の体系的な課題」について述べている。

 

 今回のサミットから発せられる最も重要なシグナルは、北大西洋地域を超えた安全保障概念の地理的拡大である。NATOはインド太平洋地域に目を向けており、日本、韓国、オーストラリア、ニュージーランドなど、インド太平洋地域の「パートナー」との協力を強化したいと考えている。Die Welt am Sonntagとのインタビューで「NATOはヨーロッパと北米の同盟であるが、ますます競争が激化するグローバルな安全保障環境に対応する必要がある。我々はグローバルなシステム競争の時代にいる。」と、イェンス・ストルテンベルクが述べたように。

 

 これがすべてである。最近ベルリンの最も著名な外交政策通の一人が、「米国に対する中国の挑戦の中心性は、大西洋横断関係が米国政府の中国戦略におけるドイツとヨーロッパの役割の機能になりつつあることを意味する」と言ったように。実際、ワシントンの多くは、NATO独裁制に対抗する民主主義の世界的防壁の最重要の構成要素とみなしている。

 

 一方、ほとんどのヨーロッパのNATO加盟国は、依然としてロシアからの脅威を念頭に置いており、中国からの挑戦についてはさほど憂慮していない。ブリュッセルでのサミットは、アメリカの外交政策の中心が、最終的にインド太平洋にシフトしていることを彼らに明らかにしたに違いない。北大西洋地域に平穏があり、同盟国が協力して平和を維持するのは素晴らしいことである。しかし、世界政治の観点から、ワシントンから見た伝統的なNATO地域は、ますます周辺に移動している。

 

 次に来るものは何であれ。ストルテンベルクの言葉で、NATO が今日開かれた「新しい章」から続くものは何であれ、サミット参加者の意思によれば、そのような憂慮は、団結の新しい始まりを阻害するものではない。

 

 以上である。中国とその政治体制が自由・民主主義と相容れないというのはそのとおりであるが、これではまたかつての東西対立の再燃になるのではなかろうか?独裁や権威主義には対抗する必要はあるとは思うが、それを力でというのでは、真の解決にはならないのではないのか。

 

 新政権はまだ始まったばかりで、ポーズだけなのかもしれないし、実際にどうなるかはわからないが、気のせいかもしれないが、対中・対ロ政策に関しては、バイデンの多分にイデオロギー的な対応よりも、あのトランプのやり口のほうが、実利的で柔軟であったような気がする。

AfDが東の若者に人気がある理由(2)

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 今回の選挙でのCDU の勝利は、特に高齢者と女性のおかげである。一方、AfDは、前回の国政選挙と同様、特に男性を説得することができた。選挙調査グループによると、AfDは全男性投票数の 26% を獲得したが、女性投票では 16% に過ぎなかった。大きな違いである。

 

 「とりわけ、18歳から25歳の男性の若い熟練労働者は、右翼政党が動員できる可能性が高い」と、Miteinander e. V. aus Halleの右翼過激派担当のDavid Begrich は言う。彼は、これは新しい展開ではなく、1990 年代の終わりからの世代の継続であり、とりわけ移民に関連していると指摘している。

 

 壁の崩壊以来、約 400 万人が西側に移住したが、そのほとんどは高等教育を受けた若者であり、そのほとんどが女性である。その結果、一部の地域では、男性よりも女性の方が 4分の1程度少なくなっており、新しい連邦州ほど男性の余剰が顕著になっている地域は、ヨーロッパではどこにもない。

 

 同時に、工場、大企業、建設業界での典型的な男性の仕事の多くが失われ、多くの場所で低学歴の若い男性が事実上「取り残され」ている。その中でも、「社会的および職業上の不安が特に顕著である」と政治学者のカースティン・フェルクル(Völkl)は言う。AfD の選挙戦略は、特に構造的に脆弱な地域のこれらの男性を対象としている。


 「若い世代では、保守的な CDU と進歩的な SPD との間の古い対立関係は、取って代わられた」と、教育研究者のクラウス・フレルマン(Hurrelmann)は指摘する。彼の目には、若者の間で新たに対立関係にあるのは AfD と緑の党であり、ザクセン・アンハルト州の 30 歳未満の有権者の 13% を説得することができた。これは、すべての年齢層の平均の2倍以上である。

 

 フレルマンによると、二つのグループの間には性差も存在する。「一方では、環境に配慮し、寛容かつ国際的な姿勢が見られる。それは主に女性である。他方では、主に若い男性が、能力の面で若い女性に追いつくことができず、遅れをとっている」と彼は述べている。

 

 前者は通常、十分な教育を受けており、良い両親と安定した社会的背景の出自である。「彼女らは、非常にリベラルで開放的であり、ストライキを行い、素晴らしい展望を開く余裕がある。」二番目のグループでは、フレルマンは、コロナの前にすでに瀬戸際にあった人々を指摘する。教育的または経済的に比較的貧しい立場にある若者ーそしてそれを自覚している人々。彼らにとって環境問題は、彼ら自身の将来についての問題よりも重要ではない。インターンなのか、それとも就職できるのか?いつかお金を稼げるのか、良い生活を送れるだろうか?そして、地位が失われる可能性があるという暗い感情は、ポピュリストや権威主義的な語調に敏感になる。

 

 フレルマンによると、これら二つのグループは、二つの新しい政治的対立者である。特に SPD と CDU は、現在の差し迫った問題(一方では環境保護、他方では移民と安全保障)に真摯に取り組んでおらず、非常に官僚的であるという評判があるため、若い世代ではそれほど高く評価されなかった。一方、緑の党と AfD は、古い政治体制を超えて、自らを最近の動きに対応できるものとして見せている。主な違いは、「影響力を持っていると感じている人もいれば、誰にも聞かれず忘れられていると感じる人もいる」と フレルマンは言う。

 

 25歳未満の人々にとって、インターネットは最も重要な政治情報媒体である。また、AfDは、他に類を見ないネット上のアテンションエコノミーのルールを習得している。アレクサンダー・ガウラントによる「鳥の糞」演説であろうと、アリス・ヴァイデルによる「スカーフの女子」の発言であろうと、インターネット上でスキャンダルと意図的な限界突破を生み出すことは、AfDのコミュニケーション戦略の一端である。それらはアクセス数と注目度を保証する。その後、それらは否定され、興奮は他人による誇張として却下される。目標は、発言可能な限界を徐々に押し上げることである。

 

 議会はしばしば単なる背景であり、州議会の演説台はソーシャルネットワークのステージングの舞台としての役割を果たす。そこで、AfD は反体制的言論空間を形成したいと考えており、それはすべてのチャネルに存在している。そして、それは若者にもよく通じる。

 

 「とてもクールな動画だ。もちろん、初めて青に投票する」と、AfDが TikTok に投稿した基本権を扱う動画で、ある視聴者は、最近そのようにコメントした。この動画では、国家は火を吐くドラゴンのように見えるが、それに対して人は自分自身を守らなければならない。党はその問題だけでなく、その美学にも切迫感を与えている。そして、それはソーシャルメディアでは特に上手く機能する。感情的な演説、コメント、インタラクションがアルゴリズムをフィードし、ユーザーのタイムラインに同様の動画を流し込む。

 

 AfD は、Telegram にも多数のチャネルを開設している。そこにはコンテンツ制御は存在しない。これは、ユーザーが過激なコンテンツをフィルタリングやブロックせずに配信できることを意味する。その後、それらは選挙運動の最新情報、トピックディスカッション、ニュースの背後に隠れる。もちろん、そのようなコンテンツが独自のフィルターバブルを残すかどうかは疑問であるが、特に InstagramTikTok では、多くの右翼過激派コンテンツが秘匿されている。それらは、不可解なゲルマンのロマン主義、予防接種のミーム、隠された暗号の背後に隠れている。Instagram では、AfD は、CDU、SPD、FDP より多い 延べ 100,000 人以上の人々にアクセスされている。

 

 ザクセン・アンハルト州の全有権者のほぼ3分の1が、コロナが現在最も重要な問題であると述べている。しかし、AfD に対応能力を付与したのは 12% だけであった。これはこの党が、特にコロナパンデミックに選挙運動の焦点を当てていたため、彼らとっては失望する可能性が高い。

 

 AfDの選挙ポスターには「ロックダウンの狂気に終止符を打て」と書かれていた。ザクセン・アンハルト州のAfDの選挙綱領は、「州政府のすべてのコロナ規制を無効にする 」ことを要求していた。これまでのところ、この党はコロナ危機の恩恵を受けることができていない。

 

 パンデミックの大部分の間、この政党は右派とリベラル市場主義派との間の権力闘争と憲法擁護当局による監視で、自党のことで精一杯であった。水平思考運動にアプローチしようとする個々の試みも、党内で物議をかもした。しかし、パンデミックの新しい段階は始まったばかりである。ドイツでは第三波が打ち破られ、ますます多くの人々が予防接種を受け、制限が緩和されている。連邦政府のコロナ対策への不満は昨年から大幅に増加している。AfD はこのムードを汲み取り、特にこの措置に苦しんでいるすべての人々の代弁者として、自らを提示しようとしている。そしてその中には若者も含まれる。

 

 ハレにあるドイツ青年研究所の教育科学者、フランク・グロイエル(Greuel)は、「コロナ時代、若者にとって、自分たちがどのような社会的価値を持っているのかが特に明らかになった。連邦政府の開放戦略では、予防接種の場合と同じように、学生は常に相対的に待たされていなければならなかった。したがって、グロイエルは、多くの若者がパンデミックの最中に確立された政治に背を向けた可能性があることを恐れている。これは、若い有権者の間で AfD が好成績を収めている理由でもあるが、それでもそれは多くの有権者の一部にすぎない。

 

 以上である。将来の展望が明るくない若者、特に低学歴の若年男性が極右政党AfDの支持母体の一つであり、それは旧東ドイツ地域に偏重しているとの指摘である。概ね妥当な分析であると思う。しかしその対策としては、ほとんど打つ手が無いというのが実情ではないのか。

AfDが東の若者に人気がある理由(1)

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 見ているドイツ紙(ZEIT online)に、選挙関連の記事が掲載されていたので、雑に和訳してみる。記事のタイトルは、"AFD IN SACHSEN-ANHALT: WARUM IST DIE AFD BEI JUNGEN MENSCHEN IM OSTEN SO BELIEBT?"(ザクセン・アンハルハルト州のAFD:なぜAFDが東の若者に人気があるのか​?)。「AfD は、ザクセン・アンハルト州の 30 歳未満の若者の間で特に強い。東では、緑の党とAfDが将来の有望政党になる可能性がある。」Benjamin Hindrichs による分析記事。以下、内容である:

 

 選挙の後はいつも同じだ。皆が起こったことについて話している。しかし、何が起こらなかったかについては、ほとんど誰も知らないー右翼過激派陣営内での多くの絡み合い、党内紛争、および、その州連合が憲法擁護庁による監視対象に指定されたにもかかわらず、AfDはザクセン・アンハルト州での得票数のほとんどを維持できた。代わりに、わずかな損失の一方で、結果を大幅に安定させることができた。そして、もしそれが30歳未満の有権者に左右されていたら、この政党はザクセン・アンハルト州議会で最も強力な勢力になっていたであろう。


 「若い有権者の大多数は、潜在的な可能性がどこにあるのかを示している。憤慨した団塊の世代ではなく、若い愛国者がいるのだ」と、Junge Alternative Deutschland チャンネルの選挙結果について Telegram のユーザーはコメントした。彼は正しいかもしれない。AfDは、2019年のザクセン州ブランデンブルク州の州選挙で、若者の間で同様に良い結果をすでに達成しているからだ。この党の選挙基盤を形成するのは「老人」ではなく、若者である。しかし、すべての年齢層の中で特に進歩的であると言われている、これらの世代は、なぜ部分的にしろ、右翼過激派であるこの政党に投票するのだろうか?


 「我々は、独裁政権によって部分的に社会化され、30年経っても民主主義に到達していない人々を扱っている」と、連邦政府の東部委員であるマルコ・ヴァンダーヴィッツは、選挙のわずか1週間前に東ドイツ有権者と AfD の投票者について語った。東ドイツで成長することへの示唆である。しかし、若い初めての有権者は、逆に「独裁政権によって社会化」されていない。しかし、選挙の成功の背後にあるものは何なのか?


 若者の投票行動を抗議として、または右翼過激派の感情表現として片付けるのは簡単であるが、短絡的である。自分の信念に反して政党に投票する人もいれば、まさにその理由で政党に投票する人もいる。両方が発生する。しかし、東ドイツの若者が主に AfD に投票する理由を本当に理解したいのであれば、六つのポイントを念頭に置く必要がある。


 「AfDは、恵まれない人々の権利を訴える政党として認識されているため、若者の間で非常に上手くいっている」と、教育研究者でベルリンのヘルティ・ガバナンススクールの公衆衛生・教育学教授であるクラウス・フレルマン(Klaus Hurrelmann)は言う。彼によると、若者は主に話題投票者である。特に東部では、彼らは政党に縛られる可能性が低い。代わりに、彼らはその時々の話題を見て短期的な選択をする傾向がある。そしてザクセン・アンハルト州の事例を見ると、AfD には多くの話題がある。

 

 この党は、根本的な反対、保守派から右翼過激派の世界観、移民の拒絶を代表している。これにより、この党は成功し、有権者の支持母体を安定させることができた。しかし同時に、東部の AfD は、特に農村部やかつての工業地帯において、経済、公共、社会保障の提唱者としての地位を確立することに成功している。構造的な変化が特に目立つ場所では、AfDは現実的話題で人々を説得し、サッカークラブや図書館の維持整備を行い、無料の地元公共交通機関を招致する。

 

 ハレ大学の政治学者であるカースティン・フェルクル(Kerstin Völkl)は、「右翼政党は、バスが1日に1、2便しか運行せず、インターネットも使えない場所で、その使い方を知っている」と述べている。特に農村地域は、組織化された右翼過激派陣営にとって重要な活動分野であり、スポーツクラブやユースクラブを通じて主に若者に対処している。したがって、農村コミュニティを放棄することは、民主的な共存にとって危険である」と彼女は言う。

 

 それ故、(地方農村部では)AfDは必ずしも右翼として認識されているわけではなく、特に若い有権者や初めての有権者にとって話題のある政党として認識されているようである。ザクセン・アンハルト州で唯一の政党として、AfD はすべての初投票者に個人的に手紙を書き、投票キャンペーンを行ってきた。(同州では)18~24歳の約半数がうつ病の症状を示しており、コロナのパンデミックにより職業訓練市場は崩壊している。これは、既存の不安、経済的および社会的恐怖を増大させる。若者は自分自身の将来について自問する:インターン職を見つけることはできるのか?家賃は払えるだろうか?そして、なぜバスは 1 日 2 便しか町にやって来ないのか?

 

 これらの問題は若者に関するものであり、AfD はこれを認識しており、たとえば、全国的な学校チケットや、若者向けのスポーツクラブの無料会員権など、実際の政治的要求を提供している。このような内容は、この政党の極端な政治的立場をかき消すことができる。極右のAfDの先駆けであるゲッツ・クビチェック(Götz Kubitschek)は、「自党の無害さを誇示することで、反対者の非難をかわし、要求されていることが市民社会の基準を下回るものは何もないことを強調する」試みを「自己無害化」と呼んだ。彼は2017年のエッセイで、無害で議論の余地のない話題を取り上げて、自党の極端な目標について有権者を欺くことは、「一般市民」がAfDに投票するのを妨げてきた「感情的な障壁」を打ち破るための重要な前提条件であると書いた。


 「AfDの有権者は、自分自身の経済的および社会的状況を特に否定的に評価するだけでなく、地域環境の状況も評価することが示されている」と、イエナの民主市民社会研究所のアクセル・ザールハイザー(Axel Salheiser)は述べてる。「彼らは自分たちのことだけでなく、住む場所や国の将来についても心配している」と彼は言う。

 

 選挙後の調査を見ると、ザクセン・アンハルト州の全有権者の 4 分の 3 が自分の経済状況を良好であると評価しており、一方でAfD(支持者)では 3 分の 2 であることがわかる。それでも、ほとんどの AfD支持者は、敗者のように感じている。また、その41% が自分の地域の生活環境が近年悪化していると感じている。この感情がこれほど顕著に表れている政党は他にはない。つまり、AfD には、個人的に特に深刻な状況にある人が投票する必然性はない。そうではなくて、物事が全体的に下り坂になっていると感じられる場合(支持される傾向にある)。これには、新連邦州の多くの若者が含まれる。

 

 アレンスバッハ世論調査研究所の代表的な調査によると、旧東ドイツの若者の 42% が将来の見通しを好ましくないと評価している一方で、旧西ドイツでは 19% に過ぎない。2021 年 5 月のザクセン・アンハルト州の若年失業率は、 8.2% であった。これは、旧西ドイツの平均のほぼ 2 倍である。また、Shell 青少年研究によると、東ドイツの青少年の 3 人に 1 人が民主主義に不満を抱いている。

 

 AfD はこの不満を認識し、それに耳を傾ける。この目的のために、この党は「連帯に基づく愛国心」の処方箋にこれまで以上に依存している。この概念は、新右翼の知識人ベネディクト・カイザーに依拠し、ドイツ人だけのための思いやりのある国家を提唱している。あるいは、より正確に表現すれば、AfD がドイツ人であると宣言した人々のための。正式に解散した政党ネットワーク「デア・フリューゲル」のこの庇護者戦略は、その間、党内で党首イェルク・モイテンを中心とする市場自由主義者グループに対して優勢であった。この戦略は、AfD のヨーロッパの同盟政党に基づいている。オーストリアの FPÖ、フランスの国民連合、イタリアの同盟も同様の社会政策を追求し、そして成功を収めている。

 

(続く) 

中国の三人っ子政策

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 見ているドイツ紙(ZEIT online)に、気になる記事が掲載されていたので、雑に和訳してみる。記事のタイトルは、"Dreikindpolitik in China: Ein Plansoll fürs Schlafzimmer"(中国の三人っ子政策:寝室の計画的目標)。「人口減少の懸念から、今後、中国の夫婦は最大三人の子供を持つことが許可される。しかし問題は、その計画が受け入れられるかどうかである。」テオ・ゾンマーのコラム。以下、内容である:

 中国の習近平国家主席には大きな計画がある。彼は、中華人民共和国を政治的、軍事的、技術的、科学的、文化的に世界をリードする大国に引き上げたいと考えている。多くの識者がそう考えているように、中国の台頭は避けられないように思われる。しかし、不運なアキレス腱、つまり人口動態の発展がある。中華帝国は人口危機に向かっている。中国は、豊かな世界大国になる前に、老いてしまう恐れがある。

 

 20世紀後半、中国の問題は人口過剰であった。1949 年に毛沢東が権力を掌握したときの人口は、わずか 5 億 4,000 万人であったが、1960 年には 6 億 6,700 万人、1984 年には 10 億人を超え、2010 年には人口が 13 億 7,000 万人に達した。2020 年には、10 年ごとに行われる国勢調査では、約 14 億人と示された。

 

 明らかに止められない人口爆発により、党は1979年に人口問題に介入するよう促され、一人っ子政策が導入された。これは残忍な強制中絶によって実施された。何億人もの女性がそれに苦しんでいる。党の幹部や役人は、子供が 2 人以上いると解雇された。特に女性の胎児は中絶され、生殖能力がさらに損なわれ、余剰男性の数が百万倍に増加した。時間が経つにつれて、人口過剰の代わりに、反対の問題が発生した。つまり、出生率の低下である。


 そして、出生率は致命的に低下した。2016年には1780万人の子供が出生したが、2018年には1520万人の新生児しか生まれなかった。出生率は、毛沢東政権下の大飢饉以来、最低の水準にまで落ち込み、女性 1 人あたり 1.3 人の子供であった(世界の平均出生率: 2.4、ドイツ: 1.5)。もちろん、これは党の出生制限政策を反映しているだけでなく、都市化の進展、教育の改善、女性の労働参加の拡大も反映している。

 

 これらの数字に基づいて、中国の人口学者は、人口が 2100 年までに 48% 減少し、7 億 3,200 万人になると予測した。20 歳から 49 歳までの年齢層が 4 億人減少し、超高齢者と要介護者の割合が急速に増加することが決定的であることが判明した。現在、35 歳未満よりも 60 歳以上の人口がすでに多くなっている。現在、65 歳以上の年金受給者を支える労働者は数人(5~6人?)であるが、2040 年には 2 人、2050 年には 1.6 人しかいないであろう。

 

 この重大な進展により、政府は 2015 年に一人っ子政策を廃止し、それ以降は 2 人の子供を許可した。しかし、これはほとんど効果がなかった。現在人口の 3 分の 2 が住んでいる都市部での生活費の高騰と、不十分な社会システムの故に、若い夫婦は子供を持つことを躊躇っている。そのため、政府は次の段階に進んだ。今後は、1 家族あたり 3 人の子供が許可される。

 

 国の出生制限の緩和または解除の兆候は、かなり前から明らかであった。「家族計画」という用語は保健当局の議題から削除され、党の作業報告書から突然「出産計画」という言葉がなくなった。重要な暗示として、2018 年の亥年の特別郵便切手が、幸せな豚の家族(猪、雌豚、三匹の子豚)の絵柄であった。

 

 2014年、申年前の一人っ子政策から二人っ子政策に変わったとき、母猿と二匹の小猿の切手が登場した。猪の記念切手は、先週発表された政治局決議のメッセージ、つまり新しい寝室目標を示唆していた。

 

 前回の国勢調査の結果は、党指導部をひどく恐れさせたに相違ない。第一に、20 歳~ 44 歳の年齢層では、1,700 万人の男性が余っている。第二に、60 歳以上の人口は 2 億 6,400 万人、人口の 18.7% であるが、2025 年には 3 億人を超え、人口の5 分の 1 になる。第三に、人口構造全体のバランスが崩れている。習近平は行動を余儀なくされた。中国共産党の新しいメッセージは、キリスト教の聖書の創世記 9:7:「あなたたちは産めよ、増えよ!」をそのまま引用することができる。


 問題は、このメッセージが受け入れられるかどうか?疑問は許容される。上海の FAZ 特派員は、「中国で広められているほど多くの子供を増やすことはできないという見解である」と書いている。1月に削除された国営新華社通信の世論調査は、この見解を確認した。20,000 人の回答者のうち、18,000 人が三人っ子政策を拒否した。彼らにとって、政府が命じたように、子供を持つことは問題外であった。したがって、専門家は出生率が 1.4 に上昇するのみと予想している。

 

 理由は?家賃は高く、子供たちの教育費は非常に高額である。おばあちゃんとおじいちゃん以外にはほとんど育児担当の選択肢はない。多くの人は両親や祖父母を養わなければならない。さらに、かなりの数の女性が、妊娠すると仕事を失う。母性保護規則はせいぜい初歩的なものである。育児休暇はなんとか180日まで延長された。さらに、中国のミレニアル世代は、子供のいないライフスタイルに慣れている。快適さは彼らにとって最優先事項である。

 

 政府は、教育助成金、退職年齢が引き上げられた場合のより包括的な年金の提供、女性の労働環境の向上、公共サービスの拡大を約束している。全体として、これは社会システムの根本的な再構築を意味する。党指導部が本当に国の人口構造を改善し、高齢化のプロセスに対処したいのであれば、それが何よりも重視しなければならないことである。それから、高齢者にとって、ロケットよりも歩行器が重要で、銃よりも杖が必要である。北京の指導部は、国内問題が彼らを外交上の穏健さに追いやれば、世界政治においてより社交的になる可能性がある。

 

 以上である。少子高齢化は、日本にとっても、他人事ではない問題である。いずれにしても、人口動態を政策的に改善させようというのは、非常に困難な作業である。基本的に、人間が人間を完全に管理できるわけがないのである。どちらも自然の一部であるからである。

 

 日本も似たようなものであるが、共産党一党独裁体制がいつまでもつのかを含め、今後の中国がどうなっていくのか、興味深いところである。

アメリカのアイデンティティ(2)

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ZEIT ONLINE:しかし、進歩と十分な進歩の間に相違はありませんか?黒人コミュニティにおける賃金や教育、それに医療へのアクセスなどの統計を見ると、米国は依然として人種差別主義国家です。

 

フクヤマ:しかし、それは議論の対象ではありません。そう、私たちはまだ警察の暴力に関して多くの問題を抱えており、改善する余地のある他の多くの問題があります。しかし、人種、性別、性的指向を、人々を定義し、決して超えられない本質的な特徴と見なす、より深刻な見方があります。それは、根底にあるリベラルな価値観、つまり個人がリベラルな社会で享受するあらゆる種類の自由の基礎となる、普遍的な人間の本質があるという考えとは、完全に相容れません。

 

ZEIT ONLINE:例を挙げていただけますか?

 

フクヤマ:投票行動を見てください。トランプは、ヒスパニック、アジア人、黒人、その他多くの人々からより多くの票を獲得しました。トランプが白人至上主義を支持するだけなら、彼ら(非白人)がトランプに投票することを期待できなかったでしょう。ポピュリストの有権者と他の有権者との最も強い相関関係は、ほとんどすべての州に当てはまりますが、さまざまな大都市で十分な教育を受けた人々と、これらの都市の外に住む人々との間の文化の違いに関係しています。 これらの違いは肌の色だけではありません。 それは、教育を受けた人が、自分と同様でない人に対して持つ、あ​​る種の優越感についてでもあります。

 

ZEIT ONLINE:左翼が傲慢になりすぎた、ということでしょうか?

 

フクヤマ:それは左翼ではありません。社会階級です。大都市に住む高学歴の人々は、自分たちの殻の中に住んでいるので、この国の他の地域で起こっていることにさえ、ほとんど気にしません。彼らは同様ではない人々の問題を理解していません。彼らはそういった人々を、ただ教育を受けていない人々と捉えます。そして、これは人種差別的な見方が破壊的であるところです。なぜなら、多くの教育を受けた人々にとって、そのいくらかの恨みを人種差別主義的であるとして片付けるのは容易だからです。彼らは、トランプに投票した人は全て人種差別主義者であると言います。しかし、それは決して事実ではありません。それはトランプ支持者の重要な部分を説明していますが、決してすべてではありません。そのような人々を駆り立てているものについて、もう少し違った見方をする必要があります。

 

ZEIT ONLINE:現在、社会に二極化が進行していることを考えると、なおアメリカ人のアイデンティティのようなものがあると思いますか?

 

フクヤマ:それが問題です。もはやアメリカ人のアイデンティティは存在しません。非常に多様な現代の民主主義は、宗教、民族、人種とは関係のない市民文化を中心に構築された、国民的アイデンティティを目指すべきです。そして、私たちはほぼ、そこに到達したと思います。しかし今、私たちは後退しています。かなりの数のアメリカ人が、民族性に基づいてアイデンティティを再構築したいと考えています。そして、それは良いことではありません。

 

ZEIT ONLINE:この点で社会的不平等はどの程度重要ですか?ジョー・バイデンは、これを改善しようとしています。彼は福祉国家を拡大しようとしています。彼が成功すれば、米国はよりヨーロッパ的になるだろうと主張する人もいるかもしれません。それは、特にそのような政策に対して非常に批判的な人々の間で、民主主義への信頼を再び回復することができますか?

 

フクヤマ:それは大きな問題で、答えはわかりません。経済的不平等は過去数十年で劇的に拡大しました。アメリカ経済が今後数ヶ月で本当に活況を呈し始めれば、それはそうなるかもしれませんが、恐らくプラスの効果をもたらすでしょう。多分それはこういった文化的な諸問題を克服するのに十分でしょう。私たちの多くはそうなることを望んでいますが、それは保証されていません。経済的不平等を是正するだけなら、バーニー・サンダースが2016年の民主党大統領候補だったはずです。


ZEIT ONLINE:アイデンティティ政治の長所と短所について十分な情報に基づいた議論を行い、社会的不平等とそれにどう対処するかについて思慮深く議論することは、一つの道です。しかし、フェイク・ニュースが広まっているという問題もあります。別の現実に住んでいるように見える人々を、どのように取り戻すことができますか?

 

フクヤマ:この問題に対する良い解決策はありません。多くの人々は、大きなインターネットプラットフォームが基本的に何が真実で何がそうでないかの仲裁者になることを望んでいます。そして、彼らはドナルド・トランプのプラットフォームを除外することでその方向に進んでいます。それは短期的な解決策として受け入れられます。しかし、アメリカの民主主義の守護者になることを、民間の営利企業に任せることはできません。

 

ZEIT ONLINE:スタンフォードでは、その問題についてチームと協力しました。あなたの提案は何ですか?

 

フクヤマ:私たちはそれをミドルウェア・ソリューションと呼んでいます。プラットフォームにコンテンツのモデレーション(仲裁)の決定をさせる代わりに、ユーザーが見たり聞いたりするものをより細かく制御できる、ミドルウェア企業の競争力のあるレイヤーにアウトソーシングします。これはフェイク・ニュースや陰謀論を排除するものではありませんが、プラットフォームの力を弱めるでしょう。両社のアルゴリズム陰謀論を推進しているため、非市民的で厄介な言説はより多くのユーザーの注目を集めています。 Facebookやその他は、政治的言説における節度の悪化に大きく貢献してきました。

  

ZEIT ONLINE:ただし、あなたの解決策では、人々がそれぞれの情報バブルにさらに固執し続ける危険性があります。

 

フクヤマ:そうですね。しかし、大きなプラットフォームはそのようなものを増幅しています。Facebookが反ワクチン陰謀論を若い母親が一緒にヨガをするサイトに押し付けることを本当に望んでいる人はいません。しかし、それはユーザーベースとその注目を構築するのに役立つので、彼らがやってきたことです。ミドルウェアは、これらのプラットフォームがそのコンテンツを広める能力を若干軽減します。さらに、私たちは言論の自由を信じています。人々は政府がフェイク・ニュースが何であるかを決定することを望まない。私たちには競合する価値観があります。私たちは、たとえ彼らが虚偽のことを言っているとしても、言論の自由に対する人々の権利を保護したいと思っています。

 

ZEIT ONLINE:フェイク・ニュースが民主主義諸制度にとって非常に危険であることを考えると、言論の自由は、民主主義を擁護するために制限を必要とする価値観なのでしょうか?

 

フクヤマ:人々はその議論をしているが、それは非常に危険なものだ。民主主義にとって非常に危険であり、それをコントロールしなければならないと言うなら、誰がその決定を下すのかという質問に答えなければなりません。誰にその権限を与えるつもりですか?それは政府になるのでしょうか?強力なインターネットプラットフォーム?あなたがそれを通して考えるとき、それらはただ良い解決策ではありません。

 

ZEIT ONLINE:Facebookやその他のプラットフォームのダウンサイジングは戦略になるでしょうか?

 

フクヤマ:そうですね。でも、それは不可能だと思います。ネットワークの基本的な経済学はそれに反対している。 AT&Tが解散したようにFacebookを解散できたとしても、それほど長くは続かないでしょう。人々はすべての競争相手を買収する別の支配的なプラットフォームを手に入れるでしょう。

 

ZEIT ONLINE:社会としての私たちは、真実が一つだけで、現在経験しているほど多くはないという点に戻ることができますか?

 

フクヤマ:わかりません。私がまだ若かった時分、この国には三大テレビネットワークがありました。前回の選挙で起こったことは、その当時は起こり得なかったでしょう。なぜなら、それらのネットワークは人々が信じる事実情報を管理していたからです。しかし、そのような世界に戻るのは困難です。したがって、他のアプローチを考え出す必要があります。

 

ZEIT ONLINE:バイデンと彼の政権が、パンデミックと経済危機から国を導き、社会的不平等に対処することに成功した場合、民主主義への信頼を回復するのにどのように役立つかについて話しました。彼が失敗した場合はどうなりますか?

 

フクヤマ:国の二極化と分裂は続くでしょう。それは次の二回の選挙に関する本当の危険です。共和党が多数の民主党有権者の投票を妨げているために選挙に勝つことに成功した場合、民主党はそれらの結果の正当性を喜んで受け入れることはありません。そして、多くの抗議と恐らく暴力があります。これが非常に厄介な方法でエスカレートすることは容易に想像することができます。これ以上推測したくはありませんが、非常に悪い結果につながる可能性のある爆発物がたくさんあることがわかります。

 

ZEIT ONLINE:では、米国の自由民主主義はまだ救われていないのですか?

 

フクヤマ:いいえ、まだ救われていません。

 

 以上である。大変興味深い記事であった。アメリカ社会に身を置いた経験はないので、良くは知らないが、アメリカ社会というものは、全体として、功利的な、ビジネスライクな社会ーつまり、基本的には、非合理的、因習的問題からは自由な社会ーであると漠然と思っていた。しかしこの記事から推測するに、理念やイデオロギーといった高尚(かつ不毛)なものではないが、かの国の社会には、人種差別等、感覚的好悪に由来する対立が根深いことが伺い知れる。

 

 それなら、トランプの政治に顕著に現れたように、傍から見ていてグロテスクかつ滑稽な現象が登場してきても何ら不思議ではない。アメリカ社会が修復不可能なまでに断片化しているという主張は、嘘でも誇張でもないということなのだろう。

アメリカのアイデンティティ(1)

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 見ているドイツ紙(ZEIT online)に、面白そうな記事が掲載されていたので、雑に和訳してみる。記事のタイトルは、"Francis Fukuyama: Es gibt keine amerikanische Identität mehr"(フランシス・フクヤマ:「もはやアメリカのアイデンティティは存在しない」。「左翼と右翼のアイデンティティ政治はアメリカの民主主義を危険に晒している、とフランシス・フクヤマは述べます。それはこの国のリベラルな価値観と矛盾しているからです。」以下、フランシス・フクヤマ政治学者・スタンフォード大教授)のインタビューの内容である:

ZEIT ONLINE:米国はドナルド・トランプ大統領をやり過ごしまたが、彼は混乱した国を後にしました。最近、共和党のリズ・チェイニーが不正選挙の疑いについて嘘をつくことを拒否したため、下院指導者の地位から追放されました。フクヤマさん、アメリカの民主主義はどのような状態ですか?


フランシス・フクヤマ:私たちは民主主義制度において前例のない崩壊の瞬間にあります。民主主義が機能する上で最も重要な特徴の1つは、政権交代の平和裏の成功です。1月6日の連邦議会議事堂への攻撃により、南北戦争以来初めて、これは成功しませんでした。私たちの多くは、ドナルド・トランプによるこの出来事が、結局は共和党を深淵に導いたことを、彼ら自身が認識することを望んでいました。

 

ZEIT ONLINE:しかし、それは起こりませんでした。

 

フクヤマ:いいえ。多くの人々が共和党の指導者を非難しています。しかし、問題は共和党の中核的な有権者にあります。世論調査のデータによると、彼らの70%以上が、重大な不正選挙があったと信じています。彼らは裁判所や他の公的機関よりもトランプを信頼しています。そして、共和党指導部は、そうした一部の支持者に立ち向かうことがなかった。彼らの多くは、自分たちがこの敗者(トランプ)に鎖でつながれていることを密かに気づいています。しかし、リズ・チェイニーだけがそう公然と言っています。


ZEIT ONLINE:代わりに、共和党主導の州は、選挙をより安全にするために、新しい法律を制定していると言われています。しかし実際には、彼らは人々が投票するのを防ごうとしています。それはどの程度危険ですか?

 

フクヤマ:非常に危険です。私たちの政治の多くは、私たちが行う選挙は公正ではなく、それらを公正にする唯一の方法は投票を制限し、投票をはるかに難しくすることであるという、この無意味な信念を中心にしています。歴史はここでも繰り返されます。人種差別が合法的であった時代には、黒人が投票できないという法律はありませんでした。彼らがしたことは、投票にあらゆる種類の新しい資格を付与することでした。有権者は教育を受けなければなりませんでした。人頭税を払わなければなりませんでした。それは明示的にアフリカ系アメリカ人を対象としていませんでしたが、事実上、彼らの社会的状況にある人々が投票することを著しく困難にしました。それが、テキサス、フロリダ、アリゾナ、そしてこれらすべての共和党主導の州が現在行っていることです。

 

ZEIT ONLINE:ここでドイツの歴史と比較できる可能性があります。いわゆる指導者原理(Führerprinzip)ーすべての党員の最高の義務は、何が正しくて何が間違っているかを定義する指導者に、絶対的な忠誠を示すことであるという考えです。共和党員はその点に達しましたか?

 

フクヤマ:そうは思わない。トランプが好きな人もいます。彼は自分の周囲にこの個人崇拝を形成する方法をかなりよく理解していました。私のように別の社会環境からやって来た人間にとって、それは理解するのが最も困難なことです。なぜなら、彼は非常に不快で、厄介で、利己的で、堕落した人物のように見えるからです。共和党支持者の多くは彼を信頼しており、トランプが自分たちのために行動していると思っています。したがって、私たちがワイマールの状況にあり、多くのアメリカ人と共和党が明白な権威主義政府に向かっていると主張する人もいます。

 

ZEIT ONLINE:そう思われないのですか?

 

フクヤマ:ワイマールの類推は完全には正しくありません。 1930年代には、保守的なドイツ人、たとえば大企業家たちは、「民主主義はこれらすべての共産主義者社会主義者の台頭につながった。それに代わるものを試してみよう」と言った。トランプ支持者の多くがそれを信じているとは思わない。トランプがいなければ、私たちもそのような状況にはなりませんでした。 他の大部分の共和党員は、彼がやったことを実行することはなかったでしょう。トランプの生涯は、勝者としてのイメージを育むことに焦点を当ててきました。彼は任期中に大統領職を失うという考えに耐えることができません。

 

ZEIT ONLINE:しかし、共和党は彼を追い払うために実際には何もしていません。

 

フクヤマ:それは近視眼的な戦略です。長期的には、米国で個人崇拝を中心にまともな政党を結成することはできません。トランプの支持率は大統領選挙以来約10パーセント低下しています。以前は40%台前半でしたが、現在は30%台後半です。さらに3年半後、彼が再び大統領選に立候補することを決意した場合、2016年に持っていたような勢いを構築することは、できなくなるでしょう。

 

ZEIT ONLINE:しかし、それは本当にすべてトランプに帰着するのでしょうか?多くの共和党員は彼と同様に政治にアプローチしますが、より賢く、より戦略的に行動します。ロン・デサンティス、フロリダ州知事のように。

 

フクヤマ:そうですね。そして、彼らの目標が共和党の大統領に選出されることだけであるならば、ロン・デサンティスはモデルになることができます。トランプ大統領時代、トランプが非常に無能であるため、米国はいくつかの点で幸運であるとよく言われました。そして、トランプのより洗練された変種が、同様にデマゴーグ的で無原則に行動したならば、それははるかに危険だったでしょう。ヨーロッパには、ハンガリーのヴィクトル・オルバーン、ベラルーシアレクサンドル・ルカシェンコなどの例があります。彼らはトランプの変種ですが、はるかに賢いので、より多くの権力を達成することができます。しかし、それでも共和党が最終的に選択する道ではないことを願っています。彼らは民主主義と投票による変化を受け入れなければなりません。もしそうなら、それは必ずしも選挙に勝つ彼らの機会を減らすわけではありません。

 

ZEIT ONLINE:なぜですか?

 

フクヤマ:特にトランプが好きではないが、民主党の政策が嫌だという理由でトランプに投票した市民もいます。 私の個人的な意見は、民主党を最も不人気にしているのは、彼らのアイデンティティ政治であるということです。ほとんどの人は経済政策を気にしません。景気刺激策とインフラ整備の提案は、実際にはすべて非常に人気があります。したがって、共和党は、有権者の投票を制限しようとするのではなく、民主党を不人気にする文化的問題を推し進めることによって、復活を遂げることができます。

 

ZEIT ONLINE:米国のような自由民主主義国家にとって、現在のようなアイデンティティ政治に重点が置かれている状況は、どれほど危険ですか?

 

フクヤマ:今は両陣営のアイデンティティ政治がすべてです。政策スタンスが好みだからという理由で、人々が共和党に投票しているのではありません。共和党は、予算、移民、自由貿易、ロシア、その他多くの問題について方向転換しました。彼らは現在、6、7年前とは正反対の政策を支持しています。したがって、共和党支持者は、アイデンティティに投票しています。過去数十年にわたって、左翼は人種だけでなく、宗教や愛国心に関する保守的な価値観や態度に関しても、右翼のアイデンティティ政治に挑戦してきました。両陣営は今、アイデンティティの勝敗を決する、このゼロサムゲームに閉じ込められています。その結果、社会的格差はますます顕著になっています。

 

ZEIT ONLINE:左翼と彼らのアイデンティティ政治は、トランプのようなポピュリストの台頭を可能にしましたか?

 

フクヤマ進歩主義者にとって、民主党によって演じられた、アメリカの歴史とアイデンティティについての特定の物語に対する政治的厳密性とその極端な強調が、それに寄与しなかったと考えるのは、愚かなことだと思います。左翼はそれを右翼よりも簡単にやってのけました。

 

ZEIT ONLINE:どのようにですか?

 

フクヤマ:たとえば、アメリカの歴史を理解する上で、1776年と1619年のどちらを支配的な物語にすべきかについて論争を始めた、ニューヨークタイムズの企画があります(編集者注:1619年に奴隷の人々を乗せた最初の船がアメリ東海岸に到着しました。1776年にアメリカ独立宣言が可決されました )。しかし、本当の問題は、1619年以来、進歩があったかということです。私の見解では、私たちが進歩を遂げていない、人種的寛容と平等の観点からリベラルな社会の理想の多くを達成していないと考えるのは、完全に狂っています。しかし、1619年の物語は、多くの「ブラック・ライヴズ・マター」の活動家によって取り上げられてきました。彼らは、米国は依然として完全に人種差別的で家父長制の社会であり、それを克服することは決してないだろうと主張します。この物語を激戦州の有権者や移民に提示した場合、彼らはこの国についてどう思うでしょうか?

  

(続く)